ビシクレット × RIKI KITABAYASHI

北林 力選手
インタビュー

SPECIAL INTERVIEW

誠実に、そしてひたむきにマウンテンバイク競技と向き合い続ける北林力選手。
地元 白馬村の大自然の中でお話を伺いました。

はじめに

北林選手:マウンテンバイクの中でもいろいろな種目があるのですが、僕がやっているのは5キロくらいのコースが設定された場所で、山道を上ったり下ったりしながら5~6周するクロスカントリー競技です。だいたい1時間半ほど走行して順位を競います。

過酷な環境で山道を上り下りするクロスカントリー競技

ビシクレット:マラソンのような長さですね。

北林選手:そうですね。時間でいうと似ています。

北林選手:自然の中を自由に走り回れるところです。特に練習の時は、自由度が高くて楽しいです。

北林選手:一番は、趣味で父が乗っていたことです。自分はもともとスキーの選手でしたが、夏の間、雪がない時期にも何かやりたいと思った時に一番楽しかったのがマウンテンバイクでした。楽しくてそのまま続けました。

ビシクレット:最初はマウンテンバイクのコースに行く、というわけではなく家の周りを走っていたのですか。

北林選手:家の周りにコースがあるので、そこを走り回っている内に、気づいたらレースに出ていました(笑)

過酷な環境で山道を登り下りするクロスカントリー競技

ビシクレット:一時期はマウンテンバイクとスキー両方の選手だったということですか。

北林選手:そうですね、両方やっていました。本当はスキーの選手になりたいくらいスキーも頑張っていました。

ビシクレット:先ほど学生時代に優勝したトロフィーや賞状を拝見しました。そのままスキー選手にという道もあったかと思うのですが…マウンテンバイクに決めたきっかけはありましたか。

北林選手:一番の決め手となったのが、高校生の頃に初めてマウンテンバイクの日本代表として世界選手権に出場したことです。当時マウンテンバイクは自分の中で競技というより、楽しくて乗るレジャースポーツみたいなものだと思っていました。それがヨーロッパに行ったら、すごくたくさんの人がレースを見に来ていて、「こんなに盛り上がっているんだ」と知った時に、自分もマウンテンバイクのレーサーになりたいなと思って。そこからはもう頭の中がマウンテンバイクだけになりました。

北林家の数々のトロフィや表彰状

北林選手:ヨーロッパも長く行っていたのですけど、なによりも落ち着きますね(笑)今はそれが一番大きいです。あとは四季がはっきりしていて山の中で遊べるスポーツがすごく多いので、1年中楽しい場所です。

ビシクレット:ファンクラブの収入の一部を白馬村に寄付もされているとか。

北林選手:そうです、茶色くなっている木があるのが見えますか?あれは紅葉ではなく「ナラ枯れ」という現象です。今、白馬村ではその対策に取り組んでいて、そういったことに役立ててほしいなと思っています。また、子供たちが使うマウンテンバイクのコースの整備も考えています。

白馬村のナラ枯れ

ヨーロッパの活躍について

北林選手:何よりもレースのレベルが高く、大会に出ている人数もすごく多いので競争率が非常に高く、レースに出るだけで自然とレベルアップに繋がることです。

ヨーロッパの地でレースにチャレンジする北林選手

北林選手:とても差があると思っている人も多いかもしれませんが、僕は全然そんなことはないと感じています。ヨーロッパは競技の部分が特化しているだけで、自転車に乗る環境だけで言ったら日本は全然負けていないと思うんですよね。山もすごく多くて…あまり比べる場所がないかなと。うまく活かせているか、活かせていないかだけの違いだと思うので、もっと自転車が使いやすいものになったり、理解されていったら、日本の自転車文化もまたすごく発展していくかなと思っています。

ビシクレット:では、日本はせっかくいい場所があるのにあまりマウンテンバイクが…と。

北林選手:そうですね。まだ気づいていないだけではないでしょうか。海外はお客さんの数もとても多いですし、盛り上がり方が違います。

駐輪場について

北林選手:白馬村だと家から出て練習に行って帰ってくるだけなのでほとんど使いません。ただ、僕は電車がすごく苦手で、東京へ行った時は友達に「自転車、錆びているのでもいいから(出かける際に)貸して」と言って乗ったことがあるんです。その時に、駐輪場という存在をあまり知らずに育ってきたので、置くところに困った経験があります(笑)

ビシクレット:この辺り(白馬村)だと自転車を停めるだけでお金を取られることがないですもんね。

北林選手:そうですね、そういうのを知らないで育ったので……はい。困りました(笑)。

ビシクレット:東京でもすごく長い距離を走ったのですか。

北林選手:あ、いや…どうなのだろう。自分では長くないと思っていても、普通に考えたら長い距離の可能性はありますね(笑)20kmくらいかな。

ビシクレット:それはかなり長いですね!

北林選手:学校には駐輪場がありました。屋根があって、タイヤをはめるものです。

ビシクレット:そこは皆さん普通の自転車で行くのですか。それともマウンテンバイクで通学するのでしょうか。

北林選手:この辺りは土地柄なのか、冬場に道路が傷むんです。なので、あまりママチャリには乗らず、競技用ほどではない少し太めのタイヤのマウンテンバイクに乗る人が多い印象です。そもそも白馬には普通の自転車を売る自転車屋が少なく、近場ではマウンテンバイクしか手に入らないという点も関係していそうです。あとは、舗装された道路からいきなり砂利道に入ったりするので、やはりマウンテンバイクが便利ですね。

トレーニングについて

北林選手:マウンテンバイクに乗る日はそれほど長くなくて40〜50kmくらい。ロードバイクに乗る日は100kmくらいです。

・100km 山手線3周 東京から​熱海

ビシクレット:100km!!(一同)ロードバイクは走りやすい道を走る練習ですか。

北林選手:持久系のトレーニングです。マウンテンバイクだとずっと道に変化がある。力の加減を強めたり弱めたりがあって、緩急差が激しいです。一方、ロードバイクはずっと一定の力で走るので、また違った練習になります。

ビシクレット:とはいえこの辺りだと、それなりに坂道が多いですよね。

北林選手:そうですね、一般の方と比べて、僕にとっては坂じゃないと思っているだけの場所もありそうです(笑)

ビシクレット:しかし、100kmはすごいですね。どのくらいの時間で走りますか。

北林選手:2時間45分ぐらいです。

ビシクレット:はやーい!!(一同)100km走っている間は途中休憩もしますか。

北林選手:100kmだと止まりません。サイクルジャージの背中のポケットに水分や簡単な食事(カロリー摂取用のスナックやジェル状の栄養補給)を入れて、飲食しながら走ります。

インタビューの最後に、今後の展望について教えてください。

北林選手:一番近い目標は、2026年のアジア大会。これは日本で開催されるので必ず勝ちたいです。その上で、同じく日本で行われる2027年のアジア選手権もしっかり勝って、2028年ロサンゼルス・オリンピックの選考にかかるというのが今の一番の目標です。

北林力 選手とビシクレット代表 井上